https://grain.org/e/4208

Rice land grabs undermine food sovereignty in Africa (In Japanese)

by GRAIN | 10 Mar 2011

コメ生産用土地取得によりアフリカの食料主権が損なわれる

(http://www.arsvi.com/i/2-food_rice.htm)

2008年の世界的な食料危機を契機に、アフリカの首都は食料自給の必要性の話が改 めてもちきりであると同時に、コメが政府の懸案の上位にくることがしばしばである。誰もが必要な生産能力の増強に同意するけれども、権力機構から出てくる 解決策は、結局は、農民に多くの肥料と「高収穫量」の種子を提供するといううんざりした旧式のやり方式になってしまう。このことは、最高権力者の眼には、 必然的に、中国のハイブリッド米種子やアフリカライスセンターで開発されるとともに大陸で活動する最も強力な援助機関や研究機関によってバックアップされ たネリカ米の種子を意味することになる[1]。アフリカ大陸の人々の大多数の生活を養い提供する農民たちの伝統的な知識と種子は完全に無視される。

アフリカ農地の支配へ殺到しているのはただ厄介なだけであるだけでなくこのトップダ ウンの種子圧力から切り離せない。アフリカ各国政府は食料自給に対して自らコミットメントを宣言している一方で、彼らは、自国の人々に内緒で、外国人投資 家と驚くほどの数の契約を締結しつつあって、コメ農地を含め国の最も重要な農地の支配権をこれらの投資家に与えているのである[2]

例えば、マリを例にとろう。マリは、他の西アフリカ数ヶ国同様、最近、コメの純輸出 国から主要な輸入国になってしまった。今度は、政府は自国農民の生産を援助して自給率を回復させることを想定して数百万ドル規模のコメの国家新規構想に着 手した。それなのに、なぜ政府は主要で広大な稲作土地をリビアの投資ファンドや中国企業に譲渡してしまったのだろうか?

数年前、バマコでのサヘルサハラ国(CEN-SAD)共同体首脳会談のついでに、マ リ共和国の大統領、アマドゥトゥマニトゥーレは、ニジェール川デルタ灌漑区域内にあるマリ共和国の主要なコメ生産地域の10万ヘクタールに達する土地の提 供を申し出た。オイルダラーで元気づいているものの、自国の食料生産には事欠いていて、CEN-SADを事実上動かしている国であるリビアは、このチャン スに飛びついたのである。その政府系ファンド[3] の 武器であるリビアアフリカ投資ポートフォリオ(LAP)銀行を通じて、リビアは、運河の拡幅や道路の改善が含まれる地域の大規模インフラ投資プロジェクト の一環として、10万ヘクタールに及ぶ支配権をリビアに与える契約をマリと結んだ。このプロジェクトはコメの生産から開始し最終的にトマトの生産や家畜を 追加するものである。

プロジェクトがどのように動くのかその詳細もついに見え始めている。プロジェクトを 動かすのを担当するのはバマコにあるLAPの子会社Malibya社である。インフラ建設は、中国の大手石油会社中国石油化工(SINOPEC)が所有す る中国の会社CGCと契約が行われている[4] 。 もう1社、無名の中国会社がこのプロジェクト向けに中国のハイブリッド米の種子供給を行うと同時に、これらの栽培方法についてその何人かはすでに中国にい る地域専門家を養成する契約を行った。この無名会社は、中国最大のハイブリッド米種子製造メーカー、「袁隆ハイテク農業社」のようであって、すでに、ハイ ブリッド米生産のためのアフリカでの大規模プログラムやナイジェリアでの同様のCGCのプロジェクトをかかえている[5] 。 これは、リビアの政府系企業による西アフリカでのハイブリッド米の生産の大規模投資はこれが最初ではない。 2007年12月、LAPは、ADAがリベリア政府から容認された土地の15〜17千ヘクタールについてアフリカ開発援助(ADA)のため現地NGO財団 と提携して管理するというリベリアのコメプロジェクトに3千万米ドルを投資した[6]

両事例では、明記されたプロジェクトの目的は地域食料のニーズを満たすために支援す ることにある。しかし、本当の動機はリビアへのコメ輸出にあることを疑う多くの理由がある。 データがFAOから提供されている最新年にあたる2005年に、リビアは、17万7千トンのコメ、6千2百万米ドル相当を輸入した。トリポリは、そのほと んどはアジアからやって来る百万人の外国人労働者を必要とすると予想されている1,300億米ドルの野心的なインフラ開発を進めているので、これら輸入 は、確かに、拡大している[7] 。 2008年12月、リビアは、「大量」の労働者募集につきバングラデシュとの合意に署名した。リビアは、他のアラブ諸国と同様に、他の国々に食料生産をア ウトソーシングすることによって、その食料ニーズに関して企業に支配されたグローバルな商品連鎖への依存からの脱出を図っている[8] 。「コメの食料保全によって、もう1つ別の大きな困難、つまり、農業生産を独占する先進国と主食の価格を独占するグローバル企業とに打ち勝つことが可能になる。」のだと、Malibya社の重役の、Abdalilah Youssefは云う[9]

LAPの副社長は、2007年12月、リベリアタイムズにリベリアでのプロジェクトは国内および海外の市場を対象とすると語った[10] 。 マリ共和国のプロジェクトでは、プロジェクトは国内コメ市場を優先すると言われているが、リビアへの輸出も計画の一部である明確な兆候がある。マリ共和国 への訪問中に、LAP社の専務取締役のアマドゥカンテdit Bandyは、ランデパンダン誌に、「このプロジェクトは、「マリ、リビアそしてCEN-SADの他のすべての国々のニーズを満たすために」、コメの生産 を行うだろう」、と語った[11]

しかし、コメがどこに行こうとも、その生産は地域の農民にはほとんど関係ない。実 際、マリ共和国のプロジェクトは、サヘルサハラ地域の灌漑の中で最も重要な水源であるニジェール川からの水に関して、一部の地元農民を土地から追い出して 他と直接競争させる予定とされる。すでに、Malibya社は、水位が低い時のシーズンオフ中の水配分の優先順について、マリ政府と交渉中である。

「人々の再編のことになると、村が自分たちの区域を離れなくてはならないことになる ので、私は、いずれの決着も混乱を生み出すと云うと同時に、私はこの点に関して全員の協力を要請しているところだ。我々にとって、これは人々を追い払った り、彼らを避難させたりする問題ではなく、単に彼らを再編する問題なのである。」と、Malibya社のAbdalilah Youssefは云う[12]

マリ共和国における開発代替促進研究所の常務取締役のMamadou Goita氏は、Malibyaプロジェクトを、農地を管理する民間部門への道を地ならししつつあるニジェール川デルタ灌漑区域のより大規模な再編成の範 囲内で提起する。「Malibyaプロジェクトや米国政府のミレニアムチャレンジアカウントの方法で資金調達されるプロジェクトなどのニジェール川デルタ 灌漑区域のプロジェクトは、農業の工業化と土地の民営化を強引に押し進めている。」、と彼は言う。実際、今月初め、ロンドンを拠点とするコングロマリット のLonrho社は、ニジェール川デルタ灌漑区域における2万5千ヘクタールのコメプロジェクトにつきマリ政府と交渉中であると発表した。これにさらに、 Lonrho社がアンゴラと締結したばかりの2万5千ヘクタールの契約とマラウィで交渉中の10万ヘクタールの土地取引が付け加わる[13]

また、いくつかの近代的な品種、特にアフリカライスセンターによって開発されたネリ カ品種の促進により、これらのプロジェクトによってどの程度、地域コメに関する豊かな地域多様性が破壊されつつあるのかという点についても懸念される。最 近のグレインのネリカ米に関して要約報告される通り、アフリカでのネリカ米の普及や大規模な促進は、その種子ニーズの90パーセントを供給し続けている大 陸農家の種子体制に大きな脅威となる。バマコ大学の植物遺伝学教授であってアフリカの遺伝的遺産の保護(COPAGEN)連合のメンバーでもある Assetou Samake博士は、ニジェール川デルタ灌漑区域では、ネリカ米が今や地域品種と置き換わりつつあるという。彼女はまた、その区域にどんな種子がもたらさ れているかに関する情報透明性のない「実験の森」になってしまっただけに、彼女はそれが遺伝子組み換え体とハイブリッド種の試験場となる可能性が心配だと もいう。

マリやリベリアのLAPのプロジェクトの場合には、両方とも中国からのハイブリッド米輸入種子が供給される。ハイブリッド米は、高収量を達成できるけれども、ハイテク機械や化学肥料の高レベル投入が採用される場合に限られる[14] 。 このことと併せて、ハイブリッド米の種子を農家が保存することは不可能であって、毎年、購入しなくてはならないため、リベリアやマリ共和国の小規模農家に とっては、種子に手が届かず実際的ではなくっている。さらに、その食事の貧弱な質が地元の市場に供給する小規模農家にとっての大きな抑止力であるけれど も、目標が出稼ぎ労働者に安価な食料源と供給することである場合には、ハイブリッド米は問題が少なく、マリやリベリアのLAPのプロジェクトの場合にはこ れがあてはまりそうである。ハイブリッド米のLAP使用により大規模ハイブリッド米プロジェクトに門戸が開放されて、西アフリカの稲作農家やその種子体系 にとって危険な先例が与えられる恐れがある。

2007年初頭、漁民、農民、先住民族、食料品労働者を代表する500人以上の人々ならびに、世界中からの市民社会組織が食料主権のための地球規模の運動を強化するためマリ共和国のNyeleniに集まった[15] 。 彼らは、「我々のほとんどは食料の生産者であって、すべての世界の人々を養う心構えがあるとともにそうできると同時にそうする意思があります。」と宣言し た。この運動は高まっていると同時に力をつけつつあるものの、人々を養いその生活を確保するための能力基盤そのものである小規模食料生産者から-種子と土 地を奪い去るよう脅かす力もまた増しつつある。食料と農業に関する2つの将来見通しとの間の紛争は、1つの大きな嵐の集合体であって、リビアやその他の土 地の収奪者たちによって利用される薄っぺらな「ウィンウィン」の口実によっては守りきれないであろうと同時に 、すでにアフリカ上空全体を覆いつつあるものである。

さら詳しくに読みたい人は以下を参照

[1] グレイン要約参照、「ネリカ米:アフリカ小規模農家の別の罠」2009年1月 http://www.grain.org/briefings/?id=215本文へ戻る

[2] グレインoryza hybridaブログ参照、「マリ共和国:リビアと中国の稲作土地の収奪、地元農家を襲う」2008年12月1日掲載 http://www.grain.org/hybridrice/?lid=212本文へ戻る

[3] リビア政府系ファンドとはリビア投資庁です。本文へ戻る

[4] Temoust、「中国、リビア、マリ間の協定署名」、2008年11月3日 http://www.temoust.org/spip.php?article7056本文へ戻る

[5] 組織、CGC海外建設ナイジェリア有限公司 http://www.cgcoc.com.cn/en/org_content.asp?classid=L290202&newsid=712231659508670本文へ戻る

[6] チーター指標、「リベリア向け稲作に3千万ドルのリビア投資」、 トリポリの投稿12月23日2007年 http://business.africanpath.com/article.cfm?articleID=48228本文へ戻る

[7] Libyaonline.com、「リビア、労働者の大量採用へ」、2008年10月13日 http://www.libyaonline.com/business/details.php?id=6433本文へ戻る

[8] グレイン、「特報:食品と金融安保のための2008年の土地の収奪」、2008年10月 http://www.grain.org/briefings/?id=212本文へ戻る

[9] Maliweb、Abdalilahユーセフ、とのインタビュー2008年11月10日 http://www.maliweb.net/category.php?NID=37605本文へ戻る

[10] ReliefWeb,「リベリア:コメ生産でリベリア支援を申し出るリベリア」 リベリアタイムズ2008年 12月17日 http://www.reliefweb.int/rw/rwb.nsf/db900sid/KKAA-79Z8B6?OpenDocument本文へ戻る

[11] Temoust、「マリにとって思いがけず手にするリビア投資」2008年5月15日 http://www.temoust.org/spip.php?article5388本文へ戻る

[12] Maliweb、Abdalilahユーセフ、とのインタビュー2008年11月10日 http://www.maliweb.net/category.php?NID=37605本文へ戻る

[13] トムBurgis、「アンゴラで"稲作土地取引を確保する Lonrho」フィナンシャルタイムズ、2009年1月16日 http://farmlandgrab.blogspot.com/search/label/Angola本文へ戻る

[14] グレイン、Oryza hybridaブログ-ハイブリッド米に抵抗するための情報や分析 http://www.grain.org/hybridrice/?blog本文へ戻る

[15] Nyeleni会議のウェブサイトを参照 http://www.nyeleni.org本文へ戻る

原文:L’accaparement des terres de rizieres met en peril la souverainete alimentaire de l’Afrique 山本義行訳



*このファイルは文部科学省科学研究費補助金を受けてなされている研究(基盤(B)・課題番号16330111 2004.4〜2008.3)の成果/のための資料の一部でもあります。
 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/p1/2004t.htm

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